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「議案第114号令和2年度一般会計補正予算案(第1号)の 組替えを求める動議」に対する賛成討論

私は、日本共産党市議団を代表して、ただいま議題となっております「議案第114号令和2年度一般会計補正予算案(第1号)の組替えを求める動議」に賛成し、あわせて、議案第114号の原案および動議に関わらない市長提出の諸議案の問題点について討論を行います。

まず、市長が提出した議案第114号「令和2年度一般会計補正予算案(第1号)」および議案第117号「令和2年度一般会計補正予算案(第2号)」の問題点についてです。

新型コロナウイルス感染症拡大に伴う緊急事態宣言が福岡県をはじめ全国に発出され、深刻な社会的・経済的影響が広がっています。今回の補正予算案は、それにともなう本市および国の緊急経済対策などを実施するためのものです。

わが党市議団は、これまでも予算議会の質問や数度にわたる市への申入れなどで中小業者への損失補償、医療・福祉関係者への支援を要求してまいりました。特に、4月10日の市長への申入れでは、緊急事態宣言を受けて感染防止のために営業を自粛する中小業者にたいして、自治体として緊急に協力金を支給することや、無観客ライブでの公演への助成など文化・芸術にたずさわる人たちへの直接給付などを求めてきました。また、国においてもわが党は早くから一人ひとりに対する一律10万円の給付を提案してきました。

高島市長も安倍首相も、こうした要求をはじめは拒んでいましたが、市民・国民の強い声に押され、ようやく重い腰をあげたものであり、まさに世論が政治を動かしつつあると言えます。

しかし問題は、多少の改善があったから万事それでよしというものではなく、感染拡大に見合った対応がとられ、最善の努力が尽くされているかどうかであります。

市長が提出した原案の問題点は、第一に、医療や福祉の提供体制にあります。

わが党は議案質疑で保健所の人員体制の充実を求めました。これは4月22日の国の専門家会議でも「保健所設置市長…のリーダーシップの下、保健所の体制を強化するための人材の確保するべき」だとわざわざ提言されているほど重要なものですが、市長は現状も問題なく、電話相談を民間に委ねるのみで、保健所の体制強化には特別の手立てを取らない態度を表明しました。

PCR検査については、他人に感染させる可能性のある軽症者、無症状者を政府が保護せず放置していたことに大きな問題があり、いまこそPCR大量検査へと考え方を転換する必要がありますが、今回の国の補正予算案には驚くべきことにPCR検査体制を整備し強化するための予算は1円もつけられていないのであります。

介護や保育など福祉施設の職員への特別給付金について、留守家庭子ども会や公立保育所の職員への給付を除外しております。市長はブログでこの特別給付を「感染のリスクもある中で、休むことなく献身的にご対応いただいている皆さん」へのものだと述べていますが、これではあたかも留守家庭子ども会や公立保育所の職員は「献身的に対応」していないかのような扱いになってしまいます。

市長が提出した原案の問題点は、第二に、中小業者への支援です。

中小業者の家賃を支援することについて、わが党は議案質疑で対象業種・金額などを拡大し、継続的に支給するよう求めました。東京都や秋田県は要請対象から外されている業種にも協力金を支給しており、こうした動きは全国の自治体にも広がっています。自治体の首長がその気になれば、少しでも制度を拡充することは可能なはずであります。

文化・芸術にたずさわる人たちへの支援については、設備投資に対して1度だけ補助をするのではとうてい足りません。わが党が審議の中で明らかにしたように、この分野は自粛期間中に活動しなければいいというものではありません。指揮者の沼尻竜典(ぬまじり・りゅうすけ)氏は「文化・芸術は水道の蛇口ではない。いったん止めてしまうと、次にひねっても水が出ないことがある」「文化は社会や経済との循環の中で育てられる。低速回転でもいい、まわり続けないとダメなんです」と述べ、「そうならないための最低限の補償を、多くの文化の現場は国に求めている」と訴えられました。わが党は国の支援があるまで、市としての継続的な支援を求めましたが、これも冷たく拒否されました。

また、風俗業に市の制度融資の対象を拡大することについても、市長は応じませんでした。同様に公的な融資の対象から外されてきたパチンコについては、感染拡大防止を目的にした営業休止を長期間実施するため、除外措置を見直すよう業者団体が国に求め、実現しています。感染の拡大を防ぐとともに、生活に困窮する多くの女性が風俗業のもとで働いている現実を踏まえるなら、風俗業だけを除外しておく理由はありません。

市長が提出した原案の問題点は、第三に、市民生活への支援です。

市民1人当たり10万円を一律に給付する「特別定額給付金」については、1年間の長期戦を想定した場合、1回だけの給付では足りるものではなく、さらなる給付を国に求めるようわが党は提案しましたが、市長は明確に回答しませんでした。

特に、2018年度の調査によれば福岡市では全市の43%の世帯が年収300万円未満の「低額所得世帯」であり、そこへの打撃は大きく、これでは全く足りません。本市として手立ての取れる生活保護世帯への福祉見舞金の復活や、上下水道料金の減免拡充などをわが党は議案質疑で提案しましたが、市長は反対したのであります。

このように、市長の提出した議案第114号は医療や福祉の崩壊を防ぎ、市民生活や地域の経済・文化を守る上では不十分なものです。したがって、同議案に対する組替えを求める動議にわが党は賛成いたします。

関連して、議案第121号「福岡市国民健康保険条例の一部を改正するための条例案」の問題点についても述べます。

この改定案は、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う緊急対策の一つとして、国民健康保険に加入する被用者などに対して傷病手当金を支給するためのものです。

ケガや病気になった時に、会社員や公務員には手当が出されたのに、国保に加入して働いていた人たちには給付されず、当事者から長年その実施が求められておりました。今回対象になるのは、健保などに入れない短期の非正規雇用の人たちですが、病気やケガなどで働けないとき、仕事を休んでいる間の生活を支えなければならないというのは、個人事業主や中小業者についてもまったく同じです。線引きして差別する道理はなく、さらなる拡充が求められます。

次に、前述の、市長が提案した議案第117号「令和2年度一般会計補正予算案(第2号)」のうち、「GIGAスクール構想推進事業」について、その問題点について申し上げます。

この事業は、市立の小・中学校および特別支援学校の子ども1人に1台のPC端末などを整備するためのものです。

わが党は、一般的に社会の技術革新そのものは歓迎するものであり、さらに今般の新型コロナウイルス感染症拡大によって学校が臨時休業に追い込まれている現状において、オンライン授業を活用することを否定するものではありません。

しかし、新しい技術の採用と利用においてはその社会的影響を十分に吟味することが政治に課せられた重要な任務であり、議会としてその立場から検証してみるとこの事業に問題がないとは言えません。

教育学が専門の児美川孝一郎(こみかわ・こういちろう)法政大学教授は「集団での学びでは『型』からはずれたような発想をする子がいて、そこからみんなが学ぶことで、考えが深まるということがあります。PCを一人一人に配って『個別最適化』で効率よく学ぶだけでは学ぶ過程が平板になり、深みがありません」と述べています。さらに児美川教授は、この構想について「学びへのモチベーションをどう引き出すかという視点もありません。やる気のある子はどんどん進むけれど、そうでない子はいくら『あなたに合った学習だ』と言われてもやる気にはならない。できる子だけがどんどん進み、格差が広がります」とその副作用を警告しています。

国連子どもの権利委員会も、各国政府に新型コロナウイルス問題で「オンライン学習が、不平等を悪化させず、生徒・教員間の相互交流に置き換わることがないようにする」ことを求めています。委員会でこの点についてわが党はどう対応するかをただしましたが、明確な回答はありませんでした。

以上で、わが党の討論を終わります。