2020年度決算反対討論
2021年10月08日
私は、日本共産党市議団を代表して、2020年度一般会計及び特別会計並びに企業会計決算諸議案のうち、議案第168号ないし171号、175号、177号、178号、180号、182号ないし189号、191号について反対し、討論を行います。
2020年度は、新型コロナ危機という戦後最悪の大災害が猛威をふるい、本市の市民生活と経済にも甚大な影響を及ぼしました。安倍・菅自公政権は、「PCR検査を広げると医療崩壊が起こる」と言って検査を軽視し、抑制する姿勢をとり、「GoToキャンペーン」に固執しウイルスを日本中にひろげ、東京五輪・パラリンピックを推進して感染爆発を招くなど、科学を無視したコロナ対応をすすめました。また、感染症対策で一番大切な、国民とのコミュニケーションを行わず、国民の声を聞かない、説明しない態度をとりつづけました。さらには、中小企業の「命綱」だった持続化給付金と家賃支援金は1回きりで打ち切るなど、コロナ対応に「自己責任」論をもちこみました。現在の感染爆発と医療崩壊は、安倍・菅自公政治による「人災」であると言わざるを得ません。
このような国のコロナ対応での無為無策と逆行にたいして、福岡市政に求められたことは、医療機関をはじめとしたケア労働の現場、市民・事業者の苦難に心を寄せ、国の無策とたたかい、暮らしや生業を守る抜本的な手立てを取りきることでした。
2020年度決算では、コロナで苦しむ市民の切実な声を受けて、中小業者などへの市独自の支援策や福祉施設・感染拡大地域での検査、少人数学級の暫定実施など、コロナ対策での一定の前進がありました。
しかし、髙島市長は、国にまともにものを言わず、国いいなりに「GoToキャンペーン」を進めるなど、感染防止に逆行するような施策も進めてきました。加えて、市のコロナ対策についてはほとんどが国や県の交付金頼みで、市単費で賄ったのは全体のわずか1%でしかなく、不十分な対策にとどまりました。
感染対策の要である大規模検査にも踏み出さず、国いいなりに「濃厚接触者」だけを、おもに検査するという不十分な対応をとり、独自で検査対象をひろげることはしませんでした。また、感染防止対策のために最前線で働いている保健所職員については、年度途中で非正規と民間委託で若干増やしたのみで、人員不足が常態化しており、現場では過労死ラインを超える長時間労働が余儀なくされました。
コロナ禍で苦境に立たされている飲食店をはじめとした中小業者への支援も到底足りませんでした。そのため、事業継続と雇用維持が困難になり、廃業に追い込まれる事業者も生まれています。
コロナは文化・芸術団体の活動をも追い詰めていますが、市の支援は新たなイベントに対するものに限られ、文化・芸術関係者が切実に求めている「場や担い手」への直接支援を拡充する動きはほとんどありませんでした。
このように2020年度決算の最大の特徴を述べるとすれば、コロナ危機という非常時のもとで果たすべき自治体の責務を果たしてこなかったものだと言わざるを得ません。
これらの問題点について、分野ごとに詳しくみていきます。
第一に、大型開発と規制緩和の問題です。
今年度には計画が破綻して見直しを余儀なくされることになったウォーターフロント地区の再整備には、すでに2020年度においてクルーズ船の寄港がゼロとなったにもかかわらず約7億円が投入されています。
また、規制緩和によって大量のビルを建て替え、渋滞、避難スペース不足、地価上昇による住民・中小業者追い出しなどの弊害をもたらす「天神ビッグバン」「博多コネクティッド」には、2020年度もあわせて約13億円が使われました。関連事業である天神通線の延伸については、用地買収は約60億円で済むと議会や審議会で説明しながら、実際に進めてみると160億円程度に膨らむことが明らかになりました。総会および分科会の審議でわが党は市民に謝罪するよう求めましたが、市は「適正」だと開き直りました。延伸にあわせて建設されるビルの容積率をアップさせ、ビルにアクセスする地下の通路を税金で建設するなど、特定企業を優遇するために、こんな不公正をねじ込むことは許されません。
人工島事業は土地の売却を促進するため、立地交付金というプレゼントをつけた上に、原価割れで叩き売りしたとしても最大421億円の大赤字を残す見込みになっていますが、そのような破綻した事業に2020年度も約152億円が投じられています。
世界水泳選手権についても、2020年度は開催支援・準備に1500万円が投じられています。コロナ収束も見通せず、開催自体が不透明な巨大イベントに今後、当初見込みの3倍にあたる約90億円もの莫大な市費をつぎ込もうとすることは、認められません。
髙島市長は、感染拡大防止と社会経済活動の維持の両立をすすめ、コロナ禍でも「賑わいづくり」・呼び込み路線を続けると主張していますが、コロナ感染拡大のもと、人流は劇的に減り、社会のありようとしても「賑わいづくり」は避ける方向になっており、この路線が破綻しているのは明白です。また、大型開発と規制緩和による「都市の成長」が「市民生活の質の向上」につながるとも述べていますが、今年6月に発表された2018年度の市民経済計算を見ても、大企業など民間法人企業のもうけは髙島市政前に比べ130%に増えているのに、市民1人あたりの家計の可処分所得は2%も減っているということに如実に現れているように、結局大儲けしたのは一部の大企業だけでした。この状況はコロナ禍のもと、さらに加速し、市民生活は危機的状況に追い込まれています。
第二に、医療・介護など社会保障についてです。
コロナ禍で市民が生活苦にあえぐ中で、国民健康保険については約3万8000筆もの署名を無視して、1人当たりの保険料を2000円、介護分を含めると4300円余も引き上げました。過酷な保険料のために、払えない人が続出し、資格証明書の交付、いわゆる国保保険証の取り上げは、交付数・世帯比ともに飛び抜けて多く、20政令市の中で最悪です。
介護保険料も値上げされたままの水準で維持し、基準額に当たる第5段階で言えば年額7万2933円にも達します。特別養護老人ホームの入所を待っている人は福岡市全体で、2607人にもなり、前回調査よりも500人増加していることがわかりました。
生活保護については、コロナのもとでますます生活困窮が広がり全国で申請件数の伸びが2.3%に達したのに対して、本市では0.7%しか増えておりません。札幌市では「生活保護の申請は国民の権利です」というポスターを張り出し、申請を広く市民に呼びかけていますが、本市にはこのような努力が見られず、逆に、保護を受けやすいようにと受給条件が弾力化された国の通知が市民に知らされないなど、後ろ向きの姿勢がこうした数字に表れたと言わねばなりません。また、わが党が求めた、保護世帯に対する夏季・年末見舞金の復活、市独自の下水道料金減免を拒否しました。
介護や障害者福祉の分野で働く人たちの処遇も劣悪な状態に置かれたままであります。
第三に、子育て・教育についてです。
この分野でも、コロナ禍で仕事を失ったり、収入が激減したりする子育て世帯が目立ちましたが、髙島市政は、生活保護に連動して就学援助基準を切り下げるとともに、わが党が要求した給付制奨学金の創設、学校給食費や保育園の副食費の無償化などにも背を向け続けました。
コロナ禍の一斉休校明けに、子どもたちに対して7時間授業や行事の中止などカリキュラムの異常な詰め込みが行われ、子どもたちは過大なストレスに押しつぶされそうになってきました。中には、自ら命を絶つという痛ましい事例もありました。ところが、教育委員会は、ごく一部の消毒要員などを除けば、正規の教職員を抜本的に増やす手立てを取ろうとせず、教職員は長時間・過密労働にさらされ続けたのであります。市内中学校で言えば、法律で定めた上限である月45時間以上の残業をしなければならなかった教員は、休校明けの6月・7月・9月・10月においては、全体の半数を超えるほどに広がりました。
わが党は総会の審議の中で、学校施設整備の現状をただしました。大規模改造の対象とされても着手されずに、窓から雨が吹き込んで水たまりができるなどの実態が放置されるなど深刻な状況が明らかにされました。また、学校の必要な場所にトイレが長年整備されないという事実も、審議で浮き彫りになりました。校舎等整備費は、前年度比8割に減り、その中でも大規模改造費はわずか2割に落ち込みましたが、教育長は抜本的な改善の手立てをとる姿勢を見せませんでした。
コロナ禍の保育において、現場からは「密を避けるためにも、長年放置されてきた保育士の配置基準や部屋面積の最低基準を大もとから見直してほしい」という切実な声が上がっていましたが、それに応える動きは市側からついに見られませんでした。また、「せめて月5万円の給料アップがあれば人並みに暮らせる」という声が現場から私どもに寄せられましたが、市長は保育労働者の抜本的な処遇改善には背を向けました。
また、留守家庭子ども会についても狭いルームに子どもたちを押し込め、支援員を非正規やボランティア扱いにする劣悪な処遇に押し込めている矛盾が、コロナ禍で一気に可視化されました。わが党は総会質疑でこうした留守家庭子ども会の保育条件や職員の処遇の抜本的改善を提起しましたが、教育長はここでも背を向けました。
第四に、中小企業施策、経済・雇用対策についてです。
コロナにより地域経済は深刻な打撃を受けましたが、中小企業への振興のための事業費はあまりにも少ないままでした。加えて、投じた額の10倍から20倍の経済効果がある住宅リフォームへの助成制度、市の発注した仕事や工事で働く人の公正な賃金を確保する公契約条例、働く人の使い捨てを許さない、いわゆる「ブラック企業」根絶条例などを冷たく拒んできたのであります。
第五に、環境・住居・防災などについてです。
気候危機を打開するため「温室効果ガス排出実質ゼロ」が世界の共通したスローガンになる中で、髙島市政は決算年度の終わりになってようやく「2040年度実質ゼロ」をめざすことを表明しました。しかし、総会の審議で明らかになったように、その決め手となる再生可能エネルギーについては現在の普及率8%という異常に低い目標からどれだけ引き上げるかさえ打ち出せず、さらに市の他の計画についても整合性のある見直しはほとんど検討されていないことが浮き彫りとなりました。
それどころか、国に対しては2030年度までに電力全体の4割から5割を再生可能エネルギーでまかなえと本市は他の団体と共同して新聞広告まで出して要求しておきながら、自分たちの再エネ普及率は8%でよいと開き直るありさまでした。ひとには厳しく、自分には甘い――こんな無責任な姿勢は許されません。
コロナのもとで失業や収入減にさらされ住むところが奪われる事例が相次いでいますが、髙島市政は家賃の安い市営住宅は新規建設を行わない姿勢を頑なにとりつづけ、低所得者のための家賃補助事業の決算年度における実績は、なんとゼロであり、行政として住宅施策に取り組む意欲も能力もないものだと言わねばなりません。
また、防災の強化と同時に地元企業への仕事づくりになる水道配水管の耐震化も4割以上が未実施のままという遅れた現状にとどまっています。
第六に、市政運営のあり方、平和・民主主義に関わる問題についてです。
ジェンダー平等の視点から、市政運営においても男女同数こそ世界の大きな流れと言えますが、本市市役所における女性管理職比率は決算年度で15.5%、審議会等委員への女性の参画率は35.3%にとどまっています。この年度に策定作業が行われた第4次福岡市男女共同参画基本計画でもこれらの目標設定は非常に低い水準にとどまりました。
髙島市政が当時の安倍首相の歓心を買おうと、自衛隊に名簿を渡し始めたのもこの年度からでした。市は対象となる若者に周知しているとしていますが、確実に本人に届くはずの郵送による通知は頑なに拒んでおり、本人が知らないうちに個人情報が第三者に提供されるという市民の不安は全く払拭されておりません。個人情報の自己コントロール権を侵害するこのような事態を、わが党は断じて認めるわけには、まいりません。
本来市が責任を持って行うべき業務についても重大な問題がありました。髙島市長は、市民への10万円の特別定額給付金の業務を、人材派遣大手パソナに約7億円で丸投げし、その結果、給付が遅れに遅れるなど、まともに仕事ができない状況となりました。その「尻拭い」に市職員が7局からのべ1095人も動員されたことがわが党の追及で明らかになっています。このような事業や委託企業は他にも拡大されており、コロナで市民が苦しんでいるときに、それを奇貨として、税金を使い大手企業を儲けさせるやり方は許されません。
決算年度は、「政策推進プラン」「財政運営プラン」「行政運営プラン」の策定作業が行われましたが、わが党が審議で明らかにしたように、喫緊の課題であるコロナ対策を全体の柱に据え、市民の命・暮らしと地域経済を守ること最優先にさせる立場での見直しは全くなされませんでした。
それどころか、「財政運営プラン」では市民センターや公園の駐車場有料化やその拡大をもくろみ、また、第三子優遇事業、福祉乗車券、就学援助など、97事業1858億円の個人給付を見直し、縮小・廃止することも検討の俎上に載せていることについて、総会の審議において財政局長は否定しませんでした。コロナ禍で苦しむ市民に負担増や切り捨てを押しつけようとするなど、言語道断であります。
決算年度は取り崩すと大見得を切ったはずの基金を逆に増やすなど、財政運営についても従来通りの姿勢を漫然と続けています。コロナ危機という非常事態であることを認識し、市民の生活、地場中小業者の営業を守るための思い切った財政出動が必要だという見地に立てば、平時となんら選ぶところのない、緊張感のない財政運営は、許されるものではありません。
以上、2020年度決算の問題点を見てきましたが、コロナでの未曾有の経済危機、生活困難が起き、それに対応した決算になったとは到底認定できる中身ではありません。コロナ危機は現在も続いており、あわせて気候危機やジェンダー平等などの立場から、これまでの大型開発を優先する市政のあり方を抜本的に見直すことこそ求められており、非常時にふさわしい機敏な対応を厳しく要求しておきます。
以上を述べて、わが党の反対討論を終わります。